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2011.10.18

Street SnapとCandid Photo

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Ricoh GRD2

RICOH GRストリートスナップコンテスト
最近Candid Photoを提唱しているリコーが、上記リンクで同社製のGRシリーズのカメラ(フィルム、デジタル両方)で撮った写真によるストリートスナップコンテストが開催されている。面白い視点からの写真も多くとても楽しめる。しかし、投稿された写真をしばらく見ていてある違和感が残った。その違和感とは何かと考えて思い当たったのは、人物が写っていないこと。正確に言うと人の表情が見える写真がないことだ。掲載されている写真は無人の風景が多く、たとえ人が写っていたとしてもシルエットまたは後ろ姿、もしくは遠景ばかりなのだ。コンテストのサイトによれば投稿写真は予備審査の上、掲載するとの記載がある。どうもそこで表情を判別できるような人物が写っている写真は除外されているようだ。試しに上の銀座歩行者天国のスナップと高層ビルの上から俯瞰した街並みの写真を同時に投稿したところ、ビルからの街並みの写真はすぐに掲載されたが、歩行者天国の写真は未だ掲載されていない。

そこで浮かぶ疑問は、人物が写っている写真を排除するストリートスナップって、一体なんなんだ?そんなものを集めてストリートスナップコンテストと呼べるのだろうか?このコンテストのサイトを外国の方が見たら「やはり原発の事故のせいで日本の街(ストリート)からは人が消えたんだ」と誤解されるのではと心配で眠れない、というのが冗談にならない。

表現の自由と肖像権に関しては、いろいろな見解があるが、少なくともこのコンテストを見る限り、どうもリコーのスタンスは肖像権に関するトラブルを避けるためなのだろうが、被写体のプライバシーに近く、表現の自由からもっとも遠いもののようだ。物を売る企業としては社会に対して物議を醸したり、誰かと何かを争ったりということを避けたいというのもわからなくもない。しかし、それでは、肖像権に関して表現の自由からもっとも腰が退けたリコーがCandidi Photoを提唱するとは、どういうことなのだろう。大きな矛盾ではないか?という疑問が浮かんでくる。

Candidi Photoとは被写体となる人物にカメラを意識させずに気取らない素のままを撮る技法だと私は思っていたし、WikipediaのCandid photographyの項(en)でもそのように説明されている。ところがリコーのウエブサイトのCandid Photoについて書かれたページには、「なにげない日常や旅先でのひとときを、写真という感動に」という口当たり滑らかなキャッチと共に従来のCandid Photoの定義とは違うことが書いてある。素ままの姿を切り取った人物写真に関しては全く触れていない。どうもリコーは「Candid Photo」という言葉を企業ブランド、つまり、広告のためにひっそりと再定義したようだ。そして、Candid Photoという言葉が醸し出す雰囲気だけを頂こうというのだろう。しかし、これは羊頭狗肉だと言わざるを得ない。カメラを売るための看板として、これまで使われて来たのとは違う意味でこの言葉を使うのであれば、紛らわしいだけでなく、これまでの写真文化を汚すことに等しいと私は考える。

表現の自由が不可侵であると訴える写真家の中には、作品を公開するかどうかに対して、被写体側には何の権利もないと考える人もいる。私はそれも行き過ぎだと思うが、GRストリートスナップコンテストでの萎縮振りを見る限り、リコーには本来の意味での「Candid Photo」を提唱する資格はないように思える。ストリート・スナップやCandid Photoを巡っては、確かに世間の意見はまちまちだ。ヘタすると血が流れ、金と時間が費やされることになる。しかし、Candid Photoを提唱するのなら、そういう修羅場において大多数の人が納得できる基準をリコーが形成していく、と言うくらいの覚悟と気概が必要だと思う。その覚悟がないなら、そんな看板は降ろすべきだ。リコーには一般的な価値基準で公序良俗に反しないような表現に対し、プライバシーを盾に被写体側から異を唱えられたら、表現の自由の立場からそれにきちんとした対応をすることをお願いしたい。つまり、節度ある表現の自由の守護者になって欲しいのだ。それによって、ストリートスナップにおいて表現の自由とプライバシーのバランスの取れた基準を形成できたら、それこそ日本の写真文化への大きな貢献になり、写真を愛する人達からの尊敬と感謝を得られるのではなかろうか?リコーにはGRDそしてGXRというCandid PhotoとStreet Snap向きの素晴らしいハードウエアがあるのだから、それらを売る以上、リコーにはそれらのカメラを活かせるような環境、つまり、文化を形成するような手助けを行うべきだと思うのだ。私はリコーに期待している。Hurrah RICOH! 頑張れリコー!

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